神様の愛に触れ、心の成長を促す「ゴスペルダンス」/ダンサー・秋山めぐみさん

幼少期にクラシックバレエ、大学時代にチアリーディング、さらにJAZZやHIPHOPなど、多彩なダンスを学んだ秋山めぐみさん。現在はチアダンスの指導をメインに「ゴスペルダンス」のレッスンを行っています。「チアダンスとゴスペルには、“人を励ます”という共通点があります」と語る秋山さんに、これまでの人生や、ゴスペルダンスの魅力について伺いました。

――さっそくですが、ダンスを始めたきっかけを教えてください。

母方の実家が、祖父が牧師を務める教会だったのですが、あるときクラシックバレエのお教室として貸し出すことになりました。
子どもの頃から音楽が大好きで、ダンスを習いたいと思っていたこともあって、10歳から高校卒業するまでバレエを習いました。

卒業後は音大へ進みたかったのですが、両親は教会付属の幼稚園を引き継ぐことを願っていたので、幼児教育に特化していた聖和大学(現・関西学院大学)に進学しました。
その年にちょうどチアリーディング部が創設されて、初めてチアに触れました。すごく楽しかったですね。

――その頃からプロのダンサーを目指していたのでしょうか?

いいえ、やはり幼稚園に勤めなければなりませんから、卒業後は故郷の鹿児島に戻って幼稚園教諭として働いていました。
働きながらダンスをしたり、チアリーディングを教えたりもしてはいましたが、あくまでも趣味やボランティアでした。

やがて結婚を機に上京し、チアダンスカンパニー「PLANETS Dance Company」に所属し、さまざまな大会で日本一のタイトルをいただきました。現在、チームは世界一のチアダンスカンパニーとして知られています。
それ以前から、キッズのチアダンスクラスにも携わっていたので、インストラクター養成のお仕事を任されるようになりました。また、テレビやCMなどに出演するようになったりと、ダンスに関連するお仕事が増えていきました。
ダンサーというよりも、初めから教えることがメインで、ご依頼があれば他のお仕事も請けて…というスタイルでした。
すごく恵まれていたと思います。
ただ、私が一気に忙しくなったことで家庭がうまくいかなくなり、最終的にお別れすることになって…。

――辛い経験でしたね。

離婚に至るまでには本当に様々なことがあり、傷つきもしました。この先の人生をどうやって生きていけばいいんだろう…と、本当に苦しかったです。
教会を離れていた時期もあったのですが、いとこファミリーのサポートを頼まれたのを機に、毎週日曜日に子どもたちを教会へ連れて行くことになって。
再び礼拝に参加するようになって、少しずつ傷が癒されていく感覚がありました。
でも、それと同時に、教会でダンスを教えてほしいと期待されていることも感じていました。
その頃の私は「これから自分1人で生きていかなければいけない」と気持ちが張り詰めていましたし、プライドも高かったので「タダで教えることはできません!」とちょっと意地悪な雰囲気をかもし出していたと思います。(苦笑)

それでもユースの子どもたちが、ゴスペルで踊るから振付をしてほしいと声をかけてくれて、一緒に踊ることになって。
今でも不思議なんですが、普段はダンスを踊り終えた後に達成感や嬉しさ、感動…とエモーショナルになるのですが、この時はなぜか始まる前に涙が止まらなくなってしまって…。
舞台袖で泣きながら涙の意味がわからなかったのですが、後になってから「そうか、これが、クリスチャンの人たちがよく言っている“聖霊に触れられる”体験なんだ」と思いました。
5代目クリスチャンとして幼児洗礼を受け、子供の頃からずっと教会に通っていたけれど、これまでこんなにも神様を近く感じたことはなかったんです。
この日、「神様、私はあなたのために躍れるダンスがあるなら、私はそれを踊りたいです」と祈りました。
そうしたら、翌日には教会のイベントで踊ってほしいとお話があり、さらに、これから「ゴスペルダンス」のミニストリーを立ち上げるから、講師をやってもらえないかというお話をいただいて。
これがゴスペルダンスのレッスンを行うようになったきっかけです。

――そもそも「ゴスペルダンス」とは、どんなダンスですか?

文字通り、ゴスペルに合わせて踊るダンスは、すべてゴスペルダンスになります。
ヒップホップやジャズ、フラダンスなどジャンルは問いません。
私が教えているのは「ゴスペルHipHop」でしたが、日本初の総合ゴスペルダンススクールである「One Gospel Dance school」を通じて「ゴスペル jazz」も教えるようになりました。
現在は、通常のお仕事のチアダンスのクラスでも、「ゴスペルチア」となるようなクラスを目指しています。

Celebration of Love at 武道館100人ゴスペルダンス振付演出/ONE gospel Dance school

――めぐみさんが考える、チアのいちばんの魅力とはなんでしょう?

やっぱり、誰かを励ますためのダンスであることです。
競技大会に出場するとなると、どうしても良い成績を収めることが目的になりがちですが、本来はスポーツチームを応援するものであり、その場にいる観客をリードしながら、一緒に応援することが最大の目的なんです。
教会のワーシップ・リーダー(※)と似ていますね。
ゴスペルも神様のメッセージを通して人々を励ます目的の音楽ですし、チアとの共通点があると思います。

※礼拝など教会で讃美の歌を献げる際にリードをする役割

――お祖父様が牧師であり、幼児洗礼を受けられたとのことで、ずっと「神様」の存在を身近に感じながら生きてこられたかと思います。
失礼な言い方ですが、思春期などに教会から離れたり、道を逸れてしまったことはなかったのでしょうか?

道を逸れてしまったのは、思春期よりも大人になってからですね。
結婚・離婚の経験もその一つかもしれません。
当時のパートナーはノンクリスチャンの方で、遠距離恋愛をしていたのですが、教会に通い始めるようになったことで結婚を決めました。
その決断が甘かったというか、本来であれば、恋愛や結婚に限らず、誰かに合わせて教会に行くのではなく、それぞれが自分自身で神様と出会わなければ信仰を持つことは難しいですよね。
初めの内は教会に通っていた彼も、だんだん「疲れちゃった」と行かなくなり、口論が増えていって…。
私も日曜日に芸能関係のお仕事などが入るたびに、彼を置いて出かけるというよりも、神様を置いて行ってしまっていたのだと思います。

いとこの子どもたちを連れて礼拝に参加するようになってからも、いつも後ろに座っていました。
自分を責めて、追い詰めて、「本当にダメな人間だ」と思っていたから前の方になんて座れなかったんです。
生活も荒れていましたし、最悪でした。

――「ゴスペルダンス」がめぐみさんの人生を大きく変えたんですね。

そうですね。

コロナ禍に入る少し前から、ゴスペルチアのダンスキャンプを開催しています。
先ほどもお話したように競技スポーツの選手を取り巻く環境においては、とにかく技術を磨くことが最優先にされがちで、心のケアは後回し、という風習が長く続いています。
もちろん、賞を獲得することや良い成績を収めることは本当に素晴らしいことですが、それ自体が人間の価値を決めるのではなく、一人ひとりが神様から与えられた人生の目的を全うするために、そして天国に向かって走っている――。
そんな想いからダンスキャンプでは、一人ひとりが愛され、価値あるものとされている聖書の価値観を軸に、仲間と楽しく踊り、祈り合いながら練習しています。
2021年からは、年に1回、クリスチャンのアスリートや指導者をサポートしている「FCAジャパン」のバックアップを得て1泊でダンスキャンプを実施しています。

――近年、ニュースでも部活動や芸能界におけるパワハラ問題が大きく取り上げられていますが、「心を守りながら技術を磨く」ことは、これからますます重視されると思います。
最後に、これからやってみたいことはありますか?

最近になって2年間ほど苦戦していたケガがようやく回復して、もう一度踊れるようになりました。
このタイミングで色々なお仕事の誘いをいただいたり、私自身がやってみたいこともたくさんあるのですが、どれが本当に私に担わされているものなのか、神様に祈り求めているところです。

でも、最大の願いは、次の世代のために用いられること。
神様を讃美する手段の一つとして、日本でもダンスが当たり前のものとして受け入れられ、自由に喜びを表現できるようになったら理想だなと思います。

――子どもたちを見ていると、喜んでいたり、楽しんでいたりすると自然とカラダが動いていたりしますね。
素敵なお話をありがとうございました。

秋山めぐみさんのInstagram:@planetmeg 
秋山めぐみさんが代表を務めるダンスカンパニー「Arise and Shine Gospel Dance Company」のYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@arise_shine




KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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