岐路に立ったらいつも、自分の意思とは真逆の道を選んできた。広告プロデューサー・落合すみれさん

 

――どんな活動をされていますか?

ひと言で肩書きを表すのはちょっと難しいのですが、“広告プロデューサー”でしょうか。
広告やカタログの制作をはじめ、写真や動画の撮影、編集など、クライアント様がどのくらいの予算で何をしたいか、どんなことを伝えたいかをヒアリングし、カタチにすることが仕事です。

――ご自身で会社を経営されているんですよね。お仕事をはじめるきっかけについて教えていただけますか。

父と祖父がカメラマンの仕事をしていたこともあり、早い段階から映像の仕事ができたらという思いはありました。

会社は父と一緒に立ち上げたのですが、色々なお仕事をする中で撮影することよりも、クライアント様のお話を聞いて、より良くするための提案をしたり、コンサル的な業務の方が自分には合っていることに気づいて、プロデューサーとしてお仕事をするようになりました。

ただ、どうしても起業したい!と思っていたわけではないんです(笑)。

――そうなんですか?(笑)
どんな人生を送ってこられたのか、気になります。

むしろ、学生時代からずっと「やりたい」と思った道にはいつも進んでこなかったというか…。

初めの転機は、東京から宮城への移住です。
高校生のときに東日本大震災が発生し、卒業してすぐに家族で気仙沼に移り住み、ボランティア活動を行っていました。

当時はインテリアデザイナーになるためにオーストラリアへの留学も決まっていたのですが、誰かの役に立ちたい、助けたいという想いと同時に、ボランティア活動は自分のためになるのではと思い、移住を選びました。

ただ、気仙沼にいたのは数か月で、すぐにボランティアセンターから仙台に移ることになって。当時の私には何のスキルもなかったので、とりあえずアルバイトをしながら、自分はここで何をしているんだろう…と悶々としていました。

そんなときに、教会で出会った方が経営する不動産関連企業で、研修という形でビジネスの基礎を教わることになったんです。
さらに、その方は私に投資すると言って、研修期間中の3か月間、お給料も支払ってくださいました。

落合さんがプロデュースした「カバンのフジタ」のランドセル

――人生の転換期ですね。

はい、まさに大きな転機でした。

初めは不動産関連の知識が中心でしたが、研修が進む中で「自分でビジネスを始めては?」とアドバイスをいただいて。
ちょうどその頃、父がドローンの免許を取得したこともあり、研修先の社長の後押しもあって父と2人で会社を立ち上げることになりました。

起業したのが2019年1月で、もう1年遅かったらコロナ禍で会社を立ち上げるどころではなかっただろうなと思います。

――こんなとき、クリスチャンはよく“導かれている”と表現しますが、目には見えない大きな力に後押しされているように感じます。

ええ、本当にそう思います。
でもまだ、これで終わりではないんです(笑)。

数年前に結婚を機に東京に戻ってきたのですが、実は私は仙台から引っ越すことがすごくいやで…。
「私には仙台で仕事があるのに、どうして東京に行かなければならないの?」とパートナーと衝突しましたし、神様にも怒りをぶつけていました。
悩んだ挙句、渋々東京に来たものの、何もかもがいやで、初めの半年は毎日泣きながら母に電話していましたね。

――それは辛かったですね…。どうやって気持ちを立て直したのでしょう?

毎日、「自分が東京にいる意味を教えてください」と祈り続けていたときに、教会でジュエリーデザイナーの方と出会って、一緒にお仕事することになったんです。
驚いたのは、彼女も私のような人との出会いを求めて祈っていたということ。
単なるビジネスパートナーではなく、とても尊敬できる方で、この出会いが与えられたことに感謝しています。

また、東京へ来たことで仙台からのクライアント様は離れてしまうのではないかと不安を抱えていたのですが、ランドセルをプロデュースした「カバンのフジタ」様をはじめ、継続してお仕事のご依頼をいただいている企業もあります。
とてもありたがいですね。

ランドセルのデザインも落合さんが手がけた

――まさに、聖書にある“ときにかなって美しい”(コヘレトの言葉3:11)ですね。

そうですね。
改めて振り返ってみると、すべて「こういうことだったんだ」と納得できます。

――ちなみに、これからやってみたいことはありますか?

正直なところ、何もないんです。
これまで、夢や目標を立てても、ことごとくひっくり返されてここまできてしまったので(笑)。

――確かにそうですね(笑)。

欲を言えば、元々やりたかったインテリア関係の仕事がしたい、もっとクライアントを増やしたい、たくさん稼ぎたい…いくらでもありますが、キリがないですよね。

「神様が出会わせたいと思う人に出会わせてください、御心(みこころ)であれば道を拓いてください」、それから、「この仕事が御心でなかったら、いつでも取り上げてください」と祈っています。

――「いつでも取り上げてください」と祈るのは簡単ではないと思うのですが。

そう祈ることで、いつまた人生がひっくり返されてもいいように準備をしているんですね。
逆に言えば、移住も、起業も、東京に戻ってきたことも、すべて“なんとなく”だったり“渋々”決断した結果、いまの人生があるわけです。

聖書には、神様は乗り換えられない試練は与えないと書かれているし、いまの仕事を取り上げられたとしても、新しい何かを与えてくださると信じています。

「あなたがたを襲った試練で、世の常でないものはありません。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。」
‭‭コリントの信徒への手紙一‬ ‭10‬:‭13‬/聖書協会新共同訳‬

経営者は孤独ですし、生きていればどうしようもなく辛くなることもあります。
そんなときは、とにかくひたすら落ち込んで、あとは神様に引き上げてもらう――この繰り返しですね。

――とてもリアルだと思います。貴重なお話をありがとうございました!

落合すみれさんのInstagram
New Leaf Production(クリエイティブプロダクション)
New Leaf Photography(撮影プロダクション)

KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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