キリスト教の素材集

読み物

証券マン、学校職員・・・紆余曲折を経て現職に。ブックライター・高井透さん

 

ブックライターとして活躍する高井透さん

 

――どんな活動をされていますか?

主にキリスト教関係のブックライティング(著者に代わって著書を執筆する仕事)や、書籍の編集、自費出版や商業出版のサポートなどを行う「有限会社ベル・プランニング」の代表を務めています。
といっても、私がこの仕事に就いたのは50歳を過ぎてからで、これまでに証券会社や畜産系の学校職員として働いたり、初心者向けのPC教室を開きながら板金業の会社に勤務したり…、色々な仕事に携わってきました。

――文章を書く仕事に就きたいという思いはずっとあったのでしょうか?

いいえ、はじめからあったわけではありません。
通っている教会の週報の巻頭言を担当する機会があり、私の文章を読んだ方から「わかりやすい」「うまい」と言っていただきました。それまで誰かに褒められたことがほとんどなかったので、自分は書くことが得意なのかもしれないと思いました。
キリスト教に関連する文章だったら、人並みには書けるんじゃないかなと思ったのです。

――そうだったんですね。クリスチャンとしての歩みを教えていただけますか?

仏教の家系で生まれ育ったのですが、結婚してから妻が友人に誘われて娘を連れて教会に通うようになりました。正直なところ、当時の私は休日に妻が家にいないことが面白くなくて、「娘の面倒を見る」という名目でついて行っていたんですね。それが、いつからか牧師に誘われて聖書を学ぶようになり…。妻がひと足早くバプテスマ(洗礼)を受け、その1年後に私も洗礼を受けました。
いま思えば、すべてが整えられたように感じますが、バプテスマ(洗礼を)受けてから15年くらいは聖書のことをわかろうとしていませんでした。その頃の私はなんとなく礼拝に通っているだけ、仕事が忙しくてほとんど礼拝に参加できなかった期間もあります。
そんなときに赴任された新しい牧師との出会いが私の信仰に大きな影響を与えました。

――どんな方だったのでしょう?

私はずっと、なぜ聖書ではゆるすということばを使うときに“許す”ではなく“赦す”と書くのか疑問でした。その方に「神様は、反省したからとか、何かしたから許すわけではない。無条件に赦してくださる方だから“赦す”と書くのです」と教わったときに、それまでわからなかった色々なことが点と線でつながったように感じました。

とにかく人のために祈る方で、祈りの大切さも教えていただきました。
まさに「目からうろこ」体験というか、2度目のバプテスマ(洗礼)を受けたような感覚がありました。その頃からですね、文章を褒めていただくようになったのは。

――2018年に初めての著作『ラブレターの書き方 家庭円満・商売繁盛のための自分史活用術』を出版されました。

これは自分史を書いて活用しようという本です。自分史はラブレターであるとしてその活用法について綴っているのですが、聖書についても触れています。
「聖書は神様からのラブレターであり、福音書はイエス・キリストの自分史である」と。

『ラブレターの書き方 家庭円満・商売繁盛のための自分史活用術』(セルバ出版)

――ご自身がクリスチャンであることは、お仕事をする上でどんな影響がありますか?

何よりも、出版にかかわる仕事の経験がない私が、50歳を過ぎてこの仕事に行きついたことが、神様からの恵みです。これまで色々な職種を経験してきましたが、そのすべてがいまの仕事にも生かされていると感じます。
現在、キリスト教関係の書籍に携わることができているのは、自分がクリスチャンだからこそだと思いますし、とてもありがたいですね。

――2022年11月には最新刊『なぜ君は笑顔でいられたの? 福本峻平 神と人とに愛されたその生涯』が発売されます。こちらはどんな経緯で携わられたのでしょうか?

はい。この本は「先天性大脳白質形成不全症」という難病を患い、33歳で召された福本峻平さんの生涯をまとめた一冊です。福本さんが通っていた教会の方からお話をいただいて、ぜひやらせていただきたい、とお受けしました。

執筆するにあたり、ご両親やご親戚、学生時代のご友人、帝京大学医学部附属病院の担当医や看護師、介護士の皆さん…約40人の方に取材を行いました。
皆さんには「どんなエピソードでもいいので、福本さんについて教えてください」とお願いして回ったのですが、福本さんは大学生のときに声を失っているので、会話をしたことがない方もいらっしゃるんですね。また、ありがたいことに健康体である私には、体も、表情も自分で動かすことができない福本さんの辛さや苦しみを想像することしかできません。ご本人から直接話が聞けないことの大変さを痛感しました。

『なぜ君は笑顔でいられたの? 福本峻平 神と人に愛されたその生涯』(いのちのことば社・フォレストブックス)

――取材中、特に印象に残っていることはありますか?

青山学院の宗教部長の先生がキャンパスを案内してくださったときに、「高井さんを見ていると、福音書の記者を思い出します」と言ってくださったことです。
イエス・キリストの生涯を書き記した福音書の記者と同じだなんて恐れ多い、と思いながらも嬉しかったですね。

取材対象者の方には、「峻平さんと一緒にしたかったことはなんですか?」という質問を投げかけました。多くの方が「もっと一緒に笑いたかった」「もっとたくさん楽しいことをしたかった」と返答する中、あるクリスチャンの方が「もっと一緒に泣きたかった」とおっしゃっていたことが印象的でした。
聖書には「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」。(ローマの信徒への手紙12章15節)と書かれていますが、これがクリスチャンのあるべき姿だとハッとさせられました。

――完成した本を手にされて、いまはどのようなお気持ちですか?

反省点も多々ありますが…もしも福本さんがこの本を読んだら、どんな表情をするかな、笑ってくれたらいいなと思います。
取材中、多くの方が「福本さんにいろんなことを教えてもらった」と語っていたのですが、私自身もたくさんのことを教わったように感じています。
直接ご本人にお会いすることはできませんでしたが、彼を取り巻く人々の言葉を聞きながら、一緒に旅をしているような時間でした。
ひとりでも多くの方に手に取っていただき、この本が励ましや、前に向かって歩き出すきっかけになれば幸いです。

――ありがとうございました。

有限ベル・プランニング
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