「クリスチャンになるつもりはなかった」2人に訪れた人生の転機/「eastern bloom」小島崇さん、美紀さん(前編)

撮影:Larsen

栃木県の那須を拠点に活動する音楽ユニット「eastern bloom(イースタン ブルーム)」の小島崇(こじま・たかし)さん、美紀(みき)さんが洗礼を受けたのは2019年。
以来、以前にも増して歌うこと、奏でることが楽しくなり、「今がいちばん幸せです」と話します。前半では、主に美紀さんのこれまでの歩みや人生を大きく変えることとなった出来事について伺いました。

――さっそくですが、お2人がキリスト教や聖書に初めて触れたのはいつ頃ですか?

美紀さん(以下、敬称略):実は私の祖父はお坊さんだったので、キリスト教とは縁がない家庭に育ったのですが、中学・高校とカトリック系のミッションスクールに通っていました。

――なかなか珍しいパターンですね。(笑)

美紀:そうですよね。(笑)でもだれにも反対されることなく通っていたんですよ。
ミッションスクールで初めて聖書に触れ、「愛の賛歌」※1や「山上の垂訓(さんじょうのすいくん)」※2など、主に生き方のお手本として学んでいました。

※1「愛の賛歌」…本質的な“愛”について書かれた、新約聖書〈コリントの信徒への手紙〉の箇所に由来する

愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。
愛は自慢せず、高ぶらない。
礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。
不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。
〈コリントの信徒への手紙1 1章4~7節〉

※2「山上の垂訓」…イエス・キリストが山の上で弟子たちに語ったとされる説教のこと。
「マタイによる福音書」5章1~48節に由来する。

美紀:当時はイエス・キリストが私たちの罪のために十字架に架けられたという本質的なことはよくわかっていなかったのですが、聖書に書かれているのは愛を大切にする生き方であり、良いものだというイメージを抱いていました。
いつか自分が信仰を持つならキリスト教だろうと思いましたし、マザー・テレサのように貧しい人々のために人生を献げる生き方に憧れたこともあったのですが、大学進学後に住んだ街で教会が見つけられず、その時は結局それっきりになってしまって。

――そうだったんですね。

美紀:その後、2001年に「eastern bloom」を結成して、2人の子どもに恵まれました。
クリスチャンになるつもりはまったくなかったのですが、ミッションスクール時代に習ったクリスマス・キャロル※3が大好きで、子どもが幼稚園の頃にはお母さんたちを集めてクリスマス・キャロルをみんなで歌う会を始めたんです。2009年に東京から那須に移住してからも、しばらくは毎年クリスマス・キャロルを歌うコンサートを開いていました。

※3クリスマス・キャロル…クリスマスの時期に歌われる讃美歌のこと

崇さん(以下、敬称略):クリスチャンになる前にクリスマス・キャロルのアルバムを発売したくらい、入れ込んでいました。(笑)

撮影:Larsen

――こちらもなかなか珍しいパターンですね(笑)
クリスチャンになる予定がなかったお2人が、洗礼を受けるきっかけは何だったのでしょう?

美紀:長男が中学1年生の時に不登校になり、引きこもってしまったんです。続けて長女も不登校になって…。
子どもたちのことがとにかく心配で、どうしてこんなことになってしまったんだろう、どうしたらいいんだろうと悩み、毎日のように泣いていました。フリースクールを始めようとしてみたり、思いつく限りのことはやってみたのですが、どれもうまくいきません。
当時は音楽活動もうまくいっていなくて、何もかも先が見えない状況の中で、近所に住んでいたクリスチャンの知人に、宣教師の方を紹介されました。
その方に、いまの状況などお話したら、「ルカによる福音書」のマルタとマリアの聖句を教えていただきました。

一行が歩いて行くうち、イエスはある村にお入りになった。
すると、マルタという女が、イエスを家に迎え入れた。
彼女にはマリアという姉妹がいた。マリアは主の足もとに座って、その話に聞き入っていた。
マルタは、いろいろのもてなしのためせわしく立ち働いていたが、そばに近寄って言った。「主よ、わたしの姉妹はわたしだけにもてなしをさせていますが、何ともお思いになりませんか。手伝ってくれるようにおっしゃってください。」
主はお答えになった。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。 しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない。」
〈ルカによる福音書10章38~42節〉

美紀:イエス様がマルタに対して言った「必要なことはただ一つだけである」という言葉にハッとさせられました。
私自身が「いい母親じゃなければいけない」とか、「学校に行くべきだ」とか、一般常識や色々なものにとらわれていたことに気づいたのです。
「イエス様を信じて、委ねていいんですよ」と宣教師の方に言われ、肩の力が抜けました。
例え学校に行けなかったとしても、神様は子どものためにすばらしい道を用意してくださっているから大丈夫だ、信じて、お任せすればいいんだと思えたんです。
そう思えたのをきっかけに、近くの教会に通い始め、聖書を学ぶようになりました。

私は自分の性格が本当に嫌いで、昔に学校で学んだような人間になりたいとずっと思っていました。でも、表向きはそれらしく振る舞うことはできても、実際には全然そんな人間にはなれなかったんです。子どもたちが不登校になったときも、「こんな自分が母親だから、こうなったのではないか」と思いました。
でも、聖書を学んでいる時に、聖霊によって内側が変えられる、変えていただけるのだということを知ったんです。それを聞いたときは本当に嬉しかったです。私には自分を変えることができなかったけど、変えていただけるんですから。それが、洗礼を受けることにした大きな理由の1つです。

――その後、お子さんの状況は変わりましたか?

美紀:それからしばらくして、長男が自宅のすぐ側にある有機農家さんでアルバイトを始めました。
那須は東京都とは違って、車がないとどこにも行けないので、徒歩で行ける場所にアルバイト先が見つかったことも本当に珍しいことなんですね。本人もすごく楽しそうに通っていて。

崇:アルバイトを始めてからはどんどん変化して、逞しくなっていったんだよね。

――そうでしたか!
いまのお話ですと、初めの内は美紀さんがひとりで教会に行かれていたんですか?

崇:そうです。毎週、日曜の朝になるといないなぁって(笑)。
僕自身はミッションスクールに通っていたわけでもなく、キリスト教とはまったくかかわりのない人生を送っていたのですが、妻から「一緒に来てみない?」と誘われたのをきっかけに初めて教会に行き、聖書にも出合いました。
一般的には、(パートナーに)教会へ誘われても「俺はいいよ」と断るケースが多いと思うのですが、なんとなく行ってみようかなと思ったんです。当時の僕は色々な悩みを抱えていて、どうしてこんなに人生はうまくいかないんだろうとずっとモヤモヤしていて……教会に行けばその答えが見つけられるような気がしました。

撮影:Larsen

――実際に教会に足を運んでみて、いかがでしたか?

崇:独特の雰囲気にちょっと驚きはしたものの、教会で語られる言葉も、クリスチャンの人たちのことも、抵抗感なく受け入れていました。
自分の人生には宗教とは縁がないとずっと思っていましたが、「聖書を学んでみませんか?」と声をかけていただいた時も「むしろ興味があります」という感覚で。そこから僕も聖書を学ぶようになり、2019年には2人揃って洗礼を受けることになりました。

後編に続く。

【eastern bloom】
小島美紀(ボーカル・アコーディオン)/小島崇(アイリッシュブズーキ・ギター)
2004年、トライエム(メルダック)よりアルバム “Capyba-land”(カピバランド)でデビュー。
2011年震災後に活動を再開。ケルト・中東・ブリティッシュロック・ジプシー音楽の要素を取り入れたオリジナル楽曲を制作し、ライブ活動を展開している。
神秘的かつ温かく包み込むようなオリジナル楽曲、伸びやかで澄んだ歌声、異国情緒あふれるギターフレーズ。「まるで、異国に迷い込んだような世界観」と評される。
現在、オリジナルアルバム4枚、クリスマスアルバム1枚をリリースしている。
2019年より夫婦ともにクリスチャンとなり、トラディショナルに加え、賛美歌も積極的に歌っている。
公式サイト:http://www.easternbloom.net/
@eastern_bloom(Instagram)
※ライブスケジュールなど、最新情報は公式SNSで随時発信中




KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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