神学生として学びながら、“ゴスペル大道芸人おっこう”として教会や地域など、さまざまな場所で活動している岩澤浩二郎さん。「心の病気を経たからこそ今がある」と語ります。
前編ではゴスペル大道芸を始めた経緯について伺いました。後編では未来について考えていることをお話しいただきました。
――ゴスペル大道芸は、どんな場所で披露されているのですか?
教会や関連イベントのほか、一般の保育施設や障害のある方の支援施設に呼んでいただく機会もあります。
ステージでは大道芸を披露しつつ、自分が心の病気になったこと、どのように回復していったかを伝えています。主に子どもたちに向けた構成を意識しているのですが、保護者の方からの反響も大きいんですよ。
また、ステージの最中によく「お手伝いしてくれる人、手を挙げてください」と声をかけるんですが、後から幼稚園の先生や施設のスタッフの方に伺うと、普段は絶対に人前に出ないような方が手を挙げてくれていることがたくさんあります。
まだ気づいていないけれど、大道芸には見る人の内側にある何かを引き出したり、大きな力があるんだなと感じています。
――現在、神学校に通っているとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか。
仕事を休んでいた期間に、転職先を探していたのがはじまりです。
いわゆる企業に就職することばかりを考えていて、「牧師」や「宣教師」は選択肢にはありませんでした。というよりも、自分の中で、一段“上”の別次元の職業として線引きしていたことに気づいたんです。
私が所属するバプテスト教会連合では、「牧師も信徒も同じ立場で、それぞれの働きには同じ価値がある。ただ与えられている役割が違うだけだ」ということを大切にしています。私自身も理解しているつもりでしたが、実感として自分の中に落ちていなかったんですね。だから無意識に、牧師は自分よりも「上の存在」として見てしまっていた。それに気づいた時に、「牧師や宣教師も、転職先の候補として並べてみてごらん」と神様に促されたような感覚がありました。そこで、本当に牧師になるかどうかはともかく、まずは神学校の扉を叩いてみよう、と思ったんです。
いまは一般企業で働きながら、夜は神学校に通っています。
――実際に通ってみて、気持ちの変化はありましたか?
牧師になりたいという思いが強くなっています。
いまの日本の教会の現状を見ていると、これまでのやり方を続けていくだけでは落ち込んでいくばかりではないかと危機感を覚えます。何か新しいやり方を取り入れなければ、聖書のメッセージを広く伝えることは難しいのではないか――と。
今はそんな「新しい牧師像」を模索して、学んでいるところです。
――神学を学ぶことは、ゴスペル大道芸の活動にも影響がありそうです。
そうですね。今後は、教会以外の場所でもゴスペル大道芸を披露する機会を増やしたいと思っているんです。
幸いなことに、すでにいくつかお声がけをいただいているのですが、一般社会ではいわゆる教会用語、聖書用語は通じませんよね。
神学校で学んでいることは、聖書にまったく触れたことがない人に向けて、どのように表現すれば伝わるかを考える上でもとても役に立っています。
――こんな言い方は適さないかもしれませんが……適応障害になったことで新しい道が拓けたのでしょうか。
本当にそうですね。今となっては、(心の病気に)なっていなかったら、どうなっていたんだろうと思います。
うつ病を患った友人が僕に言う「自分が病気になったことは宝だ」という言葉の意味が、今になってやっとわかり始めた気がします。
――大切にしている聖書の言葉はありますか?
「ヨハネの福音書8章58節です」です。
イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。アブラハムが生まれる前から、『わたしはある』なのです。」
(ヨハネの福音書8:58)
これは、私が心の病気になったときに、“友”となった聖句です。当時の私は、ひとりで苦しみを抱え込んで、「誰も心の内を分かってくれない」と感じていたんですね。
そんな時に、この聖句に書かれているように、人々の叫びを聞き、「燃える柴」(※)となって「わたしはある、今ここにいる」と語られる父なる神と、人としてこの世に来られ、すべての苦しみを知った上で「共にいる」と語られるイエス・キリストが重なり、神様はすべてをわかってくれているのだ、と深く慰められました。
※燃える柴……旧約聖書「出エジプト記」3章2~4節において、モーセの前にあらわれる神の姿
――おっこうさんに大道芸の依頼をしたい場合はどうすればよいでしょう?
InstagramのDMから受け付けています。
たくさんの人が集まるイベントから、個人のお誕生日会まで、気軽に呼べる“地域のおじさん”のような存在になれたら嬉しいですね。
――素敵なお話をありがとうございました!
ゴスペル大道芸人おっこうさんのInstagram:@juggler_okko