世界に1つしかない作品を欲張らずに作り続けたい、革工芸作家・皆川純子さん

───どのような活動をされているのですか。

東京・東中野にある「あとりえふぁんとむ」で革工芸をしています。ここは、心に病を抱える人が集う共同作業施設で、30人ほどの人が革細工とお菓子作りのグループに分かれて作業をしています。これまで、栞(しおり)、キーホルダー、小銭入れ、お財布などを作ってきました。また施設では、地域に根ざした活動も兼ねて公園や地元企業の清掃も請け負っているので、そちらにも参加しています。本当は革細工だけをやっていたいのですが、資金稼ぎでやらせてもらっています。

───どのように作るのか簡単に教えてください。

裁断された牛革を、トントン叩いて傷をつけます。打ったところが白く残るので、そこに色を埋めていき、ニスを塗って仕上げていく、というように完成までに10工程くらいあります。栞を完成するのに、乾かす時間も含めると3,4時間はかかります。革細工は値段が高くなってしまうので、あまり大きなものは作れず、小物が中心です。

───集中力のいる作業ですね。

はい。でも、デザインを考え、完成させていくまでの工程は楽しいですね。できた作品は世界に1つしかないものですし。

───作業所には毎日通われるのですか。

今は、新型コロナウイルス感染防止ということで週1回です。あとは在宅勤務です。ただ家には道具がないので、図案を考えています。革細工の道具は、個人で購入するにはとても高価なので、自分で揃えるのは難しいのです。

───革工芸を始めたきっかけを教えてください。

以前入院していた病院で、作業療法の一環で革細工を習っていて、それが革細工との出会いです。その後、作業所をいろいろ見てまわっているうちに、「あとりえふぁんとむ」を知りました。他の作業所はどこもしっくりこなかったのですが、ここだけはトントン拍子に話が進み、入所が決まりました。そのときに、革工芸をやってることを知り、以前もやったことのある革細工をまたやりたいと思い、今に至っています。もう13年になります。

───小さい頃からモノを作るのが好きだったのですか。

はい、大好きです。絵を描いたり、手芸をしたり、編み物をしたり、、外で遊ぶより家で何かを作っていることのほうが好きでした。

───イラストも描かれているんですね。とても素敵な絵ですね。

こちらは売り物ではなくて、好きで描いてます。似顔絵ですが、モデルはいなくて想像で描いています。

───教会はいつ頃から行かれているのですか。

母がクリスチャンなので、教会には小学生の頃から行ってました。でも、学年が上がるにつて、教会から足が遠のくようになってしまって、、

───また行くことになったのはどうしてですか。

病気のこともあって、しばらくの間日曜は家でぶらぶらしている状態でした。ある日母が突然、「純子、純子、今度の牧師先生は説教が短いから教会に行ってみなさい」って言うんですね。それで、「じゃあ行ってみようかな」と思って行ってみたところ、説教が短いだけでなく、先生ご自身も面白かったので、また行き始めるようになりました。今はその先生も引退されましたが。

───「あとりえふぁんとむ」で革細工を始めたのと同じ頃ですか。

そうですね。同じくらいです。40歳の区切りで病名が定着して、教会にも行き始めて、2000年のクリスマスに洗礼を受けました。

───どのように決心されたのですか

洗礼準備会の中で牧師先生が、マタイによる福音書にあるガリラヤ湖で起きた話をしてくれました。それは、イエス様が水の上を歩いて、弟子もそれに続こうとするのですが、信仰が薄すぎて、水に落ちてしまうところを、イエス様がその手を掴(つか)んで弟子をつかまえるという箇所です。牧師先生から、「皆川さんもイエス様に手を掴まれ、捉えられているんだよ」と教えてもらいました。そのことに感動して、受洗に前進しました。

私が一生懸命にならなくても、いつでもイエス様が捉えて支えてくださっている、そう信じています。実は教会でも嫌なことはあります。いつもいつもいいことばりではありません。でも「イエス様に捉えられているから、逃げたりしてはいけない」と思うと、わりと辛抱強くいられます。

───今後どのような作品を作っていきたいですか。

あまり欲張らずに、細々でも続けていければと思っています。このような作品でも買ってくださる方がいることが本当に嬉しいです。

───最後に好きな御言葉を教えてください。

「荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』と言われたのは、この人のことである。」(マタイ3:3)です。中学生の時に覚えた御言葉です。

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