受けた“恵み”を、料理やおもてなしに変えて届けたい。/曙橋「お食事処GRACE」ミレンデス久美子さん、クリスティンさん(前編)

2023年にオープンした東京・曙橋の「お食事処GRACE(グレイス)」はフィリピン出身のミレンデスさんが家族で営むお店。看板メニューの「穴子飯」をはじめ、おいしいメニューが手頃な価格で楽しめるとして人気を集めています。主に接客を担当するミレンデス久美子さん、クリスティンさんに、これまでの歩みを伺いました。

――ご家族そろってクリスチャンと伺ったのですが、代々クリスチャンの家系なんでしょうか。

久美子さん(以下、敬称略): 主人はフィリピン人で、もともとはカトリック教徒だったのですが、現在は家族でプロテスタントの教会に通っています。私は26歳で洗礼を受けるまで、いわゆる無宗教でした。

――久美子さんが教会に通うようになったのは結婚されたことがきっかけですか?

久美子:いいえ、そうではないんです。私の生まれ故郷である岩手から千葉へ引っ越してきた際に、プロテスタントの教会に通うフィリピン人の方に誘われたことがきっかけです。
それまで私は、仏教や神道にはあまりいい印象がなく、キリスト教に対しては親しみを感じていました。むしろ機会があったら深く知ってみたいなと思っていたほどです。
当時はカトリックとプロテスタントの違いもよくわかっていなかったのですが、主人がその方が通う教会へ行ってみようと言うので、その時に初めて教会に足を運びました。
何もわからないながらも、もっと知りたい、信じてみたいという気持ちが強く、教会で牧師さんに「イエス様を信じたいですか?」と問いかけられ、「はい、信じたいです」と答えていました。そこから少しずつ聖書を学んで、理解を深めるようになり、今に至っています。

――それまで無宗教だった久美子さんが洗礼を受けると知った時、ご家族はどんな反応でしたか?

久美子:特に反対をされたり、何か言われたりということはなかったですね。
大きな声では言えませんが……それまで“不良”に近いような生活を送っていて、言葉も汚かったので、その頃を知っている兄や妹は、あまりの変貌ぶりに「本当に久美子なのか!?」と驚かれました(苦笑)。

――いまの久美子さんからは、そんな過去があったなんてまったく想像ができません(笑)。
ご主人はずっと料理人としてお仕事をされていたのでしょうか?

久美子:そうですね。フィリピンでも日本でも、和食を中心に色々なお店で働いて腕を磨いていました。
でも、もともと料理人になりたかったわけではなかったそうです。彼のお父さんが病気がちだったことから、長男だった彼は大学進学を諦め、高校卒業してすぐにマニラにある親戚の叔母さんがやっていた日本料理店で手伝いをしていたのが始まりだと聞いています。

「お食事処GRACE」の看板メニューは「穴子飯」。ランチでも人気が高い

――当時のご主人はとても大変な思いをされていたと思うのですが、今になって考えてみるとすべてが繋がっているようにも感じられますね。
いつか独立開業したいという夢を抱いていたのでしょうか。

久美子:夫婦で「いつか自分たちのお店を持ちたいね」と話し合ったり、何度か物件を探したりしたこともありましたが、なかなか本腰を入れられなくて。
私たちと、さらにクリスティンの想いが一致したことで、ようやく2023年3月に「お食事処GRACE」をオープンすることができました。

――オープンしてから1年半が経ちましたが、ここまで順調でしたか?

久美子:それがもう、全然(苦笑)。借りられると思っていたお金が借りられなくなるなど、初めからハプニングだらけで、お店を開いたのは間違いだったのかと思ったこともありました。
ただ、私にはこれまでにも崖っぷちに立たされてもう本当にギリギリ、というタイミングでピンチを切り抜けた経験が何度もあり、「神様は必ず必要なものを備えてくださる」という確信があります。不安はありましたが、とにかく祈り続け、奇跡としか言いようがない出来事の連続で1年間続けることができました。
この1年は、神様が私に対して「本当に信じているのか」とテストされていたようにも感じています。

わたしの神は、御自分の栄光の富に応じて、キリスト・イエスによって、あなたがたに必要なものをすべて満たしてくださいます。
(新約聖書:フィリピの信徒への手紙4章19節)

――改めて、「お食事処GRACE」のコンセプトや、店名の由来について教えてください。

クリスティンさん(以下、敬称略):ここは商店街に面した立地で駅からも近く、ファミリーやビジネスマン、高齢者の方など、幅広い世代の方が通るんですね。
看板メニューの「穴子飯」をはじめ、そうした方々に楽しんでいただけるお料理と、私たちのおもてなしを通して「心もお腹もいっぱいに」なってもらえるお店を目指しています。

店名は、神様が私たちに無条件の愛や恵みを与えてくださっているように、この場所が、お客様にとって祝福や恵みを受ける場所になってほしいという祈りを込めて、恵や祝福などの意味を持つ「GRACE」と名付けました。
毎朝オープン前には、バタバタしてしまうこともあるのですが、なるべく家族で一緒に祈る時間を持つことを大切にしています。

のれんにも特徴的なロゴデザインが

――店名や魚のロゴデザイン※から、わかる人には「クリスチャンのお店だ」と伝わりますね。お客様は地元の方が多いのでしょうか?

※2本の曲線を交差させた魚のシンボル「ΙΧΘΥΣ(イクトゥス)」は、古くからキリスト教の象徴として用いられてきました。ギリシア語の「イエス・キリスト」「神の」「子」「救世主」の5つの頭文字を順に組み合わせると「魚」となることに由来します。

クリスティン:クリスチャンかどうかにかかわらず、地元の方もたくさんいらっしゃいますし、SNSなどを通じてお店を知り、遠くから来てくださるクリスチャンの方もいます。
店内には聖書のメッセージが書かれたカードを飾っているのですが、それを見て「すごく素敵なことが書かれているね」と興味を持って声をかけてくださるお客様もいて、とても嬉しいですね。

――既に地域の方に愛されているんですね。

後編に続く

お食事処GRACE
住所:東京都新宿区住吉町8-28 B-STEPビル 1F
TEL:080-3404-9354
営業時間:12:00~15:00(14:30LO)、18:00~20:00(LO)
定休日:水、日、祝日
公式Instagram:@oshokujidokoro_grace

こども食堂(毎週火、土)
営業時間:17:00~18:30
予約はこちらから

KASAI MINORI

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主にカレーを食べています。

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