次回作のテーマは“夫婦愛”!?/ゲームクリエイター・yonaさん(後編)

クリスチャンのゲームクリエイターとして、「神様の愛」を伝えるゲーム制作に取り組んでいるyona(ヨナ)さん。
デビュー作である“天国の希望”をテーマにした「In His Time」はゲームファン達の間でも話題に。
前編ではゲームクリエイターの道に進んだきっかけについて伺いました。
後編では、より多くの人に届くゲームを作るためにはどうすればよいか、客観的な視点で伴走する講談社ゲームクリエイターズラボの織田和馬さんとの対話や、次回作について伺います。

――クリスチャンではない織田さんにとって、当初のシナリオや、ゲームの世界観に対して違和感はなかったですか?

織田さん(以下、敬称略):私ともう1人の編集者で担当をしているんですが、どちらにもそもそもクリスチャンや聖書に対する知識がないんですね。
だから最初の半年間くらいは、ゲームの中身をどうするかということよりも、yonaさんを知るための時間に費やしました。
何かあるたびに「yonaさんはこんな時にどう考えるんですか?」「yonaさんから見たら、これってどう見えているんですか?」と聞いたりして。

印象に残っているのは、「yonaさんが一番怖いものはなんですか?」と聞いたときに「差別をされること」という答えが返ってきたことです。
日本ではいわゆるマイノリティ的な存在であり、牧師家庭というある種特殊な環境で育ってきたからこその怖さなんだろうなと思いました。
それから、(聖書で伝えている)「死」や「天国」についての考え方もyonaさんから初めて教わりました。

「In His Time」のワンシーン © yona / Kodansha Ltd.

――とても丁寧にコミュニケーションを取られてきたんですね。
実際にゲームをプレイした方からはどんな感想が寄せられていますか?

yonaさん(以下、敬称略):デザインを評価してくださる声のほか、「心が軽くなった」など、私が伝えたかったことをそのまま受け止めてくださっているのかなという印象があります。
一方で、動画配信を通して「素敵なゲームだったけれど、最後は納得がいかない」と率直な意見を言ってくださる方もいて。
こうして、プレイしてくださった人があれこれ意見を交わしたくなるゲームになっていることが嬉しいですね。

――次の作品のテーマは決まっていますか?

yona:結婚観だったり、夫婦の在り方をテーマにしたゲーム制作しているところです。
いま、日本だけでなく世界を見ても「愛する」ことや結婚に対する価値観がとても曖昧で、それがいろいろな問題につながっているように感じていて…。
“神様から与えられた愛で愛する”とはどんなことなのか、わかりやすく、受け止めやすい形で表現できたらと思っています。

織田:前日談があって、「In His Time」を発売してから次回作はどうしようかとずっと話をしていたのですが、先にいくつかいただいた企画書が編集部に通らなかったんです。
確かに、ゲームとして遊べるものになりそうだけれど、前作ほどの魅力が感じられなかった。
それで「我々に伝わるとか、伝わらないとかは抜きにして、yonaさんがいま一番作りたいものを出してください」とお話したところ、最も身近な“愛”をテーマにした企画案が出てきて、これだったら!とようやく通ったんです。

yona:ゲームの企画を考えるはずが、ドラマや映画のような企画が通ったので、自分自身でもどういうことなんだろうと思っていたんですが(笑)

織田:これが本当にyonaさんがいま一番作りたいものであり、yonaさんにしか作れないものだと思ったからこそ、企画が通ったんですよ。

――聖書自体もとてもドラマティックで、旧約聖書を元に『十戒』や『プリンス・オブ・エジプト』の映画作品が誕生したりもしていますが、聖書のワンシーンをそのまま切り取るのではなく、自分自身や現代の生活に落とし込んだ作品を手がけることもテーマだったりするのでしょうか?

yona:特にそこにこだわっていないというか、手法は何でもいいかなと思っているんです。
自分が共感する聖書の箇所を抜き出してゲームのストーリーを作るのも面白そうだとは思うのですが、実際に制作するにあたっては、まずは編集部の方たちの共感を得なければならない。その時に、私自身の信仰が表れると思うんですね。
これから私の人生の中で、ある聖書の箇所にすごく当てはまるような経験をしたときは、聖書そのものを題材にしたゲームが作れるかもしれません。

「In His Time」のワンシーン © yona / Kodansha Ltd.

――最後に、好きな聖書の言葉があったら教えてください。

「ローマの信徒への手紙8章28節」です。

神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべての事を働かせて益としてくださることを私たちは知っています。
ローマの信徒への手紙8章28節(新改訳)

この聖句は中学2年生で洗礼を受けた際に、みんなの前で証しをした際に引用した個所です。

牧師だった父が10歳の時に亡くなり、当時は「神様の期待に応えるために生きてきたのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう」と理解できませんでした。
でも、そういった自分には理解できないことにも、すべて神様の計画があるんだ、と話したことがいまもずっと記憶に残っていて。
いまとなってはその当時、本心からそう信じていたか自信が持てないのですが、この先もいろんな大変なことが起こるかもしれないけれど、それらはすべて、神様がその先の良いことのために立てた計画の一つであると信じていて、いつか天国へ行った時に、神様が「ほら、言ったでしょう」って言ってくださることを期待していきたいです。

――私も壁にぶつかった時、この一節に励まされています。

織田:すみません、“証し”するとはなんでしょうか?

yona:そうですね、何と言ったらいいかな…。
神様が自分にどんな風にはたらいてくださっているか、自分の経験を通して証言することです。

織田:なるほど。ありがとうございます。
…と、日々こんな対話をたくさんしているわけなんです。

――すごくリアルなやりとりでした。(笑)
どんな方にゲームをプレイしてほしいですか?

yona:クリスチャンの方にも、ゲームの雰囲気がいいなと思ってくださった方にも、ぜひ気軽に遊んでいただいて、「天国の希望」に触れてもらえたら嬉しいです。

――ありがとうございました。次回作も楽しみにしています!

yona(@Yona_unltb)さん / X (twitter.com)

「In His Time」
リリース日:2023年10月3日
プラットフォーム:Steam / Nintendo Switch(2024年5月発売)
プレイ人数:1人
ジャンル:アドベンチャー / パズル
価格:580円
対応言語:日本語 / 英語 / 中国語(簡体字)
PHOTOGRAPH: yona/KODANSHA.LTD.




KASAI MINORI

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主にカレーを食べています。

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