―どんな絵を描いていますか?
日常の風景を見て描くことと、空想から発想を得て描くことの両方があります。具体的な風景を描く具象画を描くときは、日常の中で心打たれた風景を描くようにしています。人によって風景の見え方が違うと思いますが、普段は何気なく通り過ぎてしまうような風景が、絵にしたときに魅力的に見えてきたことを今まで実感してきました。そういったことを共有したいと思っています。
空想画を描くときは、音楽や本のイメージなどから発想を得ています。自分が楽しいと感じることや希望、喜びを視覚化できたらいいなと思っています。絵を描くことで子どもの時に自然の中で遊んでいたような感覚を味わったり、わくわくしたりする感じが楽しいです。
それから、特に光をきれいに描くことを意識しています。太陽の光や自然の風景は神さまが造ったものと考えているので、街を歩きながら草木や空を見て神さまの栄光が現れていると感じています。宗教的モチーフを描かなくても、神様の栄光を表現したいと思っています。
―今の絵のジャンルを描くことにした理由はありますか?
とにかく絵は描きたいと思っていました。日本画と油絵とで迷いましたが、油絵の方が自分にとってより自由に扱えると感じたので、油絵を選びました。油絵は、絵の具に透明感があり、何層も重ねると平面でも空間に奥行きが出るところに面白さを感じます。いくつも色を重ねると何色とも言えないような色が出ることも魅力です。そういう作業が楽しいです。使えば使うほど絵の具が体に馴染んでいく感じがします。仕上げ作業には神経を使いますが、その作業を経て一つの作品を完成させることにやりがいを感じます。
―美術大学に進まれたきっかけは?
子どもの時から絵を描くことが好きで、美術の勉強がしたくて美術科のある高校を選びました。その高校では時間割の半分くらいが美術の授業だったので、いろいろと学ぶうちに絞られてきて、東京藝術大学美術部絵画科に進学することにしました。私の家は芸術系でも、絵を得意とした家族がいた訳でもありませんでした。私一人、美術が得意だったので、これは与えられた賜物なのかなと思い、進学を決めました。
小学2年生の時、不登校になったことがきっかけで、中学3年までホームスクールで学びました。クリスチャン家庭にはホームスクールという家庭教育方法があることを母が知っていたので、学校に籍を置きながらホームスクールに切り替えることにしました。自分のペースで勉強ができたことがよかったです。学校に通っている子に比べると友だちと毎日遊べずに寂しいとは思いましたが、その分、ひとりで過ごす時間の中で神さまとの関係を築くことができました。そのことが私にとって、とても大きなことだったと思っています。
―影響を受けた絵や作品はありますか?
特に印象的なのが、バーニー・フュークスというアメリカのイラストレーターの作品です。油絵で雑誌や絵本などの絵を描いている方で、美術の予備校に通っていた高校生の時にその作品を見てすごく感動しました。伝わる空気感や夕焼けのような色が特徴的なのですが、夕陽の光があたっているところがリアルに感じられて感動しました。写真のような絵でありながら、色使いや光の強さが写真とは違う。絵画ならではの美しさを感じる作品です。その作品を見てから、建物に夕陽の線が落ちているところなど、それまで特に気にしていなかったところに目が留まるようになりました。何気ない風景の中にきれいだと思うところを見つけるようになって、これまでの視点が変わりました。
―好きなみ言葉はありますか?
詩編143編8節「朝にはどうか、聞かせてください。あなたの慈しみについて。あなたにわたしは依り頼みます。行くべき道を教えてください。あなたに、わたしの魂は憧れているのです。」
特に「魂が憧れている」という箇所が、私自身、美しい風景などに感じる憧れに近いと思いました。神さまの栄光に憧れる魂に共感しています。
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