クリスマスツリー・コーディネーターの目的は、教会に誘うきっかけ作り/ピアニスト、プロデューサー・佐々木潤さん

――音楽活動をはじめ、色々な分野で活躍されている佐々木さんですが、今日は「クリスマスツリー・プロデューサー」としての活動について教えてください。

僕は学生時代に“誰にでもわかる言葉と、親しみやすい音楽で神様を賛美したい“というビジョンで「レインボー・ミュージック」を立ち上げました。以来、クリスマスシーズンを中心に色々な教会でクリスマスコンサートをさせていただく機会が増えたのですが、クリスマスの装飾が質素なところが多くて…。もちろん、それがだめだということではないのですが、教会のクリスマスを魅力的に見せるためには、きちんと装飾したツリーがあった方がいいのではと思ったんですね。
それで、自分が主催するクリスマスコンサートにはツリーや装飾に凝るようになったのがはじまりです。
ちょうどその頃に牧師である父が新しい会堂を取得したこともあって、教会のクリスマス装飾にも力を入れるようになりました。

子どもの頃の体験もきっかけのひとつです。
父の教会は開拓教会(※)で、地域の人にクリスマスに教会に来てもらうために、チラシをたくさん刷って地域に配ったり、色んな所に貼ったりとすごく力を入れたのですが、それを見て来てくださったのはたった1人。
1人でも来てくれたなら良し、と感謝するべきなんでしょうけれど、たくさん準備したのに全然来てくれなかったことに子どもながらに無念さを感じていました。
どうしたらクリスマスに教会に来てくれるんだろう?と考えたときに、装飾に力を入れたら誘いやすくなるんじゃないかと考えたんです。
「礼拝に来ませんか?」と誘うのはハードルが高いけれど、「うちの教会のクリスマスツリーを見に来ませんか?」だと声がかけやすいんじゃないかなと思って。

※教会が少ない地域など、新しい土地に教会を建てて伝道すること

そこからクリスマスツリーとオーナメントのコレクションを始めました。
海外でもコンサートを開催したり、いろんな国を訪れたりするたびにオーナメントを大量に集めたり、それを聞いた友達がお土産に買ってきてくれるようにもなったり。
初めは自分の教会の装飾だけだったのですが、知人に頼まれる機会が増え、キリスト教番組で取り上げられたのをきっかけにメディアの方の目に留まってTV出演の依頼をいただきました。

佐々木潤さんが手がけたクリスマスツリー

――メディアに取り上げられたことで一気に認知度が高まりましたね。
同じような活動をしている人がなかなかいないからこそ、注目されたのでは。

そうですね。
ビジネスとしてではなく、自分のミッションとして行っているものであり、クリスマスの本当の意味を伝えられるのはクリスチャンしかいないだろうと思いました。

実は、クリスマスツリーを究めるために、フラワーマネジメントを1から学んで、資格も取得しているんですよ。

――すごい! あくまでもビジネスではないんですね。

そうです。基本的には、ツリー装飾に必要な費用以外は一切いただいていません。
自分の考えとしては、クリスマスツリーはクリスチャンではない人を惹きつけるための手段であって、それがなくても人が集まって、本当の意味での礼拝ができるのであれば、必要ないと思っているんです。
若い方や、新しい人に教会に来てもらいたいと悩んでいる方に向けては、クリスマスの装飾をちょっと改善するだけで来やすくなるのでは、とご提案しています。

――素敵なツリーが飾られていると惹きつけられたり、行ってみたいと思う方は多いかもしれませんね。
だからこそクリスマスシーズンに某テーマパークにたくさんの人が足を運ぶわけで…。

そうなんですよ。ただ、テーマパークなどの商業施設ではクリスマスの意味が伝えられることはなく、そこには本当のクリスマスの喜びはないんですよね。
日本で本当のクリスマスをお祝いできるのはやっぱり教会であり、それぞれの教会が少しずつでも魅力的に変化していったら、「クリスマスは教会に行きたいよね」という人が増えたり、テーマパークにはないものが教会にあることに気づいたりすると思うんです。

――なるほど。

最近は“ミニマリスト”という価値観が広がって、家庭にクリスマスツリーがない方も増えていますよね。
そこで、僕が今年推したいのがクリスマスリースなんです。ツリーと比べて場所を取らないし、フレッシュな枝や葉を使えば香りも楽しめます。
クリスチャンの方が自宅でクリスマスパーティーを開いてお友達を呼んだときに、ツリーやリースがあると、本当のクリスマスの喜びや意味を伝えやすくなるのではないかと思っていて。

クリスマスの時期は大忙しでゆとりがないというクリスチャンの方も多いのですが、だからこそゆったりとした気持ちでリースを作る時間を持つことを提案したいですね。

――リースをお友達と作るのも楽しそうです。
クリスマスツリー・プロデューサーとして、他にもやってみたいことはありますか?

ひとつ考えているのが、ツリーを飾ってほしいという教会を、理由も添えてもらって募集するんです。その中から1か所選んで、しっかりお話も聞いたうえでプロデュースする――いつか、そんなことをやってみたいですね。
大がかりなプロジェクトになると思うので、さすがに無償というわけにはいかず、どこかの企業や団体とタイアップして実現できたらいいなと思っています。

以前、信徒の方が家を建てた際に、クリスマスツリーをプレゼントしたことがありました。「教会にツリーがあるから、自宅にはなくてもいい」と言っていた方が感動して、ツリー1つでこんなに変わるんだってすごく喜んでくれて。そんな喜ぶ顔が見られるような活動をしたいですね。

――素敵ですね! プロデュースしてほしいという教会もたくさんありそうです。

まだ他にも大きな夢があって…。
いま、教会の1階のカフェスペースで毎月ライブを開催しているんですが、空間づくりや見せ方などすべてプロデュースしているんですね。
これをモデルケースとして、おしゃれなカフェでありながら、ライブができる環境も整っていて、さらにキリスト教図書も扱っていて…というような拠点を全国各地に作れたらいいなと思っているんです。

クリスチャンアーティストが新しい作品を発表した際、各地の教会を中心に回ってライブをすることが多いと思うのですが、教会によって規模も雰囲気も、設備も本当にさまざまです。
そこでしっかりとした音響設備が整った、ライブ会場にもなり得るカフェを各地に置くことで、全国ツアーが組める。さらに、音楽活動だけで食べていくことが難しいアーティストたちにとって、カフェが働く場所にもなるのではと考えているんです。

カフェとしてだけでなく、フラワーアレンジメント教室や、ゴスペルクワイヤーのレッスンなど、教派を超えて、地域の人が気軽に集まれるような場所が理想ですね。

――47都道府県に設置するとなると、佐々木さんの分身がたくさん要りますね(笑)

きっと同じようなビジョンを持っている方がいらっしゃると思うので、少しずつ活動が広がっていけばと思っています。

それから、もう1つやりたいことがあるんです。

――なんでしょう?

実は僕、“サウナ―”でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を取得しているのですが、いつかサウナを開業したいという夢がありまして。

――急にサウナ! でもなぜ、サウナなんですか?

聖なる空間でひとり黙って静かに過ごして、最後にととのうというサウナの一連の流れが、礼拝で霊的な心のととのうこととリンクしているような気がしていて。
なんといっても、サウナーにとって最大の醍醐味って水風呂なんですよ。
あれって、クリスチャンの洗礼に似ていますよね。

――言われてみれば確かに!

そこで最近「クリスチャンサウナ協会」を立ち上げて、ラジオを始めようとしているところです。
ゆくゆくはクリスチャンのアウフギーサー(熱波師)を育成して、ゴスペルをかけながらアウフグースを楽しんでもらったり、色んなクリスチャンアーティストのライブも楽しめるような野外サウナイベントを企画できたらいいなと思っています。

コロナ禍の反動でサウナブームが起きているのですが、それだけ多くの人々が癒しを求めているんですよね。本来はその対象が教会になるべきですが、体を整え、健康でい続けることもこれからの教会を支える上で重要です。

――佐々木さんの頭の中は常にいろんなアイデアで溢れているんですね。
次の展開が楽しみです。

Rainbow Music Japan(佐々木潤さんの公式サイト)
Jun Sasaki(Instagram)




KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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