アートを通じて、日本人のキリスト教に対するイメージをポジティブに。クリスチャンアーティスト・正野真侑子(しょうの・まゆこ)さん

 

――どんな活動をされていますか?

クリスチャンアーティストとして、絵を中心に作品を制作したり、子どもたちに絵を教えたりしています。
また、2020年からは自分のブランド「LYN」を立ち上げ、オリジナルグッズを販売しています。

――“LYN”とはどんな意味でしょう?

“Love Your Neighbor”の略で、聖書の言葉である「隣人をあなた自身のように愛しなさい」をコンセプトに、聖書や神様の愛を伝えることを目的に活動しています。

もともとは、コロナ禍でマスクが手に入らなかった頃に、手作りのマスクを無償で配布したのをきっかけに始まったプロジェクトです。
多くの人々が緊張や不安を抱えているなか、少しでも笑顔を届けたい、一人ひとりが隣人を思いやる気持ちを持てたら…そんな祈りを込めて、カラフルなマスクを作っていました。

――LYNのInstagramに4か月間で400枚以上のマスクを配布されたとあり、その数の多さに驚きました!
正野さんはアメリカで洗礼を受けたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

16歳のときに留学したアメリカのホストファミリーがクリスチャンの一家だったんです。
当時、たくさんのコンプレックスを抱えていたわたしを、心から受け入れ「これは神さまの愛だから」と言って無償の愛を示してくれました。

それまでは家族にも友達にもクリスチャンはいなかったし、キリスト教やクリスチャン=敷居が高くて、堅苦しいルールがいっぱいあって、ちゃんとした人でなければいけない…そんなイメージを持っていました。

アメリカでの経験を通して、クリスチャンとは常に正しい人ではなくて、自分の弱さを認めることで自分の罪が赦されている人であること、実はルールに縛られているのではなく、むしろ自由であること。そしてこんな弱い自分たちだからこそ神さまの力が必要なんだということを教えてもらいました。

――“クリスチャンアーティスト”として活動しようと思われた経緯はなんだったのでしょう?

日本のキリスト教に対するイメージが、ずいぶん前からアップデートされていないなと感じていて…。

アメリカの教会に行けば、全身にタトゥーが入っている人も当たり前のように存在しているし、ロックミュージックで賛美している人もいる。何年か前には、ジャスティン・ビーバーが洗礼を受けて大きなインパクトを与えましたよね。
わたしはアメリカの教会での経験や、教会での出会いを通じて、それまでクリスチャンに対して持っていた「ダサい、つまらない」という印象が大きく変わりました。

これって、すごく重要なことだと思うんですね。
自分にとって魅力的でなければ、人間は興味を持たないと思うんです。

――確かに、初めに「素敵!」「かわいい!」というインパクトがあることはとても重要ですね。いまの日本に、若い人たちにとって魅力的だったり、興味を持ってもらえる教会はどれくらいあるのでしょう…。

だからこそアートには、その入口になる力があると思っていて。
例えば、私がいきなり「神さまの愛ってね…」と語りはじめたら「えっ、ヤバい奴」だと思われるでしょう(笑)。

大前提として、神さまは一人ひとりに自由な意思を与えているので、メッセージをどう受け取るかはその方の自由です。でも、まず「知る」きっかけだけでも作ることができたら、何か未来が変わるんじゃないかなと思うんです。

私の作品はすべて聖書がテーマになっていて、作品に込めたメッセージを日本語と英語で印刷したものを添えて販売しています。といっても、伝統的な宗教画や、よくあるみことばを日本語で書いたカードとかではなく、ポップなデザインなので、パッと見て聖書がテーマだとわかる作品はほとんどありません。

作品を観てくださった方が「このアーティストはどんな人なんだろう」「どんなメッセージが込められているんだろう」と興味を持ってくれたり、単に「かわいい!」と手に取ってくださったのをきっかけに、キリスト教に触れてもらえたら嬉しいですね。

――何事においても“いまの時代”に合わせてアップデートしていくことは重要ですね。
作品を手がけるときに大切にされていることはありますか?

まずは“祈り”です。
自分が何を作りたいかではなくて、「私はいま、何を作るべきでしょうか?」と神さまに祈り、尋ねます。
私にとってアートは、あくまでも神さまの愛、メッセージを伝える上で手助けをしてくれる大きなツール。自分の日々の生活の中での体験や、悩んでいるときに励まされた聖句をベースに作品を作ることが多いです。

それから、自分の作品に執着しすぎないこと。
どの作品にも思い入れがあるので、つい執着してしまうんですが、結局、天国に行くときには、絵は持っていけないんですよね(笑)。
きっといつかホコリまみれになって、燃えて、消えてしまうけれど、メッセージや信仰は消えない。
あるとき、師匠に「作品は神さまが用いられるべき場所に導いてくださる」と言われたことが執着を手放し、自分と神さまとの関係を成長させるきっかけにもなりました。

――なるほど。正野さんはいま、どんな未来を思い描いていますか?

大きな夢は、代々木公園で「クリスチャンフェス」を開催すること。
色んなクリエイターを集めて、クリスチャンやキリスト教に対する印象が変わるような面白いイベントがいつかできたらいいなと思っています。音楽も、伝統的な讃美歌だけでなくラップなんかがあってもいいと思うし。

多くの教会でも、人を呼ぶためにいろいろなイベントを開催していると思うのですが、正直なところ、私が自分の友達を誘いたいかと言われたら、これはちょっと難しいな…と思うことが多いんですね。
だから、クリスチャンがためらわずに友達を誘えるような、そしてクリスチャンではない方がふらっと立ち寄っても楽しんでもらえるような、楽しいフェスを企画してみたいです。

――すごく楽しそうです! 最後に、告知などがあればお知らせください。

不定期で金曜日の10:00~18:00まで、目黒区にある私のアトリエ「MINAMI TERRACE」をコミュニティスペース“フライデーテラス”として開放しています。とにかくこの場所は、人と人が繋がる場所。“みんなのリビングルーム、みんなが安心できる場所、ホッとできる場所”をテーマに、いろんなことに活用しています。

そして、12月20日~31日まで、ラフォーレ原宿でポップアップストアを出店することが決まりました! 今回の展示のために、新しい作品もたくさん準備しています。
クリスマスシーズンでもあるので、クリスマス礼拝に行くきっかけになったり、いろいろな教会との架け橋になれたら嬉しいですね。

正野真侑子
Instagram:@mayukoshono
LYN Online Store:https://loveneighbor.thebase.in/
Minami Terrace:@minami_terrace

KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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