聖書のメッセージを日常に
――『マリアが笑った!』もそうですが、みなみさんは、『ぼくのみたもの 第五福竜丸のおはなし』や『ヒロシマの少年 じろうちゃん』など、社会的なテーマも扱っていらっしゃる印象があります。絵がとてもかわいらしいからこそ、かえってその背景にあるものが迫ってくるような感覚もあって。
ありがとうございます。テーマは自分で決めるのではなく、今回のように、編集者の方から依頼をいただいたり、何かとの出会いがきっかけになったりすることが多いです。
ただ、『ぼくのみたもの 第五福竜丸のおはなし』は、自分から描きたいと思った作品です。当時の出版部長に第五福竜丸展示館へ連れて行っていただいて、学芸員の方のお話を聞いているうちに、頭の中に絵が浮かんできて、「これを外に出すのが自分の仕事だ」と感じたんです。
その作品を見てくださった被爆二世の山田みどりさんから、広島の原爆のことを伝えたいという思いで書かれた詩に絵をつけてほしいと、『ヒロシマの少年 じろうちゃん』のご依頼をいただきました。
私の父が東京大空襲を経験していて、子どもの頃から「戦争は嫌だ」と聞かされていました。私自身の中にも当然、平和を願う気持ちがあり、お話をいただいたときには、ぜひ描かせてくださいとお返事しました。
――最新作の『ひめくり ヘブンズプランツ 耳を澄ませて』はシリーズ5作目ですね。
ひめくりシリーズでは、聖書のなかから31のメッセージを選び、「神様が伝えたいのは、こういうことなんじゃないかな」というニュアンスをくみ取って、私なりの言葉に置き換えて短い文章とイラストを添えています。
このシリーズは、いのちのことば社『百万人の福音』の編集長を務める宮田真実子さんから企画をいただいたのが始まりです。宮田さん自身、子育てをしながら仕事をするなかで、忙しくて聖書を読む時間が取れないことがあったそうです。そこで、部屋に置いておけば、短い言葉が自然と目に入るような日めくりを作りたいという話になりました。
もともと『百万人の福音』で連載していた「ヘブンズドロップス」を、日めくりとしてシリーズ化したものです。
聖書を読む元気や時間がないときにも、ふと言葉が目に入って、励まされたり、慰められたり、少し心が神様のほうに向いたり。そんな助けになるものになればと思っています。
――確かに、忙しかったり、疲れたりしていると、聖書を開く気力もなくなります。文字を追うのもしんどいというか。
私にもよくありますよ。
音声で聴くことはあっても、日常的にぶ厚い聖書を開くのはなかなか……。
――みなみさんの絵はポップでやわらかいタッチなので、贈り物にも喜ばれそうです。
プレゼントに使ってもらえたらいいな、という思いもあります。
聖書の知識がなくても、聖書を読んだことがなくても、心にすっと入ってくるような言葉を選ぶことを心がけています。
今回は、お花の絵を描く予定です。と言いつつ、まだほとんど描けていないんですが……。(取材をしたのは2026年7月)
次のテーマは、「ちゃんとしてない」自叙伝?
――そんな状況で聞くことではないかもしれませんが、これから描いてみたいテーマはありますか?
いっぱい描きたいものはあるんですけど、いちばん描きたいものは漫画です。
以前、自分が神様に出会い、導かれた「証」を漫画にしたことがありますが、大学生の頃に「神様を信じました」「自分の力ではなく、恵みによって救われるということが分かりました」というところで終わっているんですね。
その後にも本当にいろいろなことがありました。長くクリスチャンとして生きるなかで、分かったつもりでいたけれど、全然分かっていなかったことに気づいたり、いくつも教会を変わったり……。変なカルト宗教にハマってしまった時期もありました。(苦笑)
そういうことも全部、過ぎてしまえばネタになるなと思って。
死ぬまでに描けたらいいなと思っています。

――確かに、洗礼を受けたからといって、そこが人生のゴールではないんですよね。
本当にそうですよね。
自分の人生において、「神様を信じてよかった」と思っています。
でも、その後は「みんな素晴らしい人生になりました」というわけではないんですよね。童話みたいなハッピーエンドではない。
洗礼を受ける前は、クリスチャンって、“ちゃんとしている人”だと思っていました。でも、実際はそんなことないんです。
「敬虔なクリスチャン」という言葉がありますが、いつまで経っても私自身は、ちゃんとなんてしないんですよ。
――この間、美術館で「ゲッセマネの祈り」をテーマにした絵を見たんです。イエスが必死で祈っているそばで、弟子たちは寝ている場面で――これって、全然ちゃんとしてないですよね。
イエスに「寝ないでくれ」と言われたにもかかわらず、3人の弟子がグーグー寝ている。まったくちゃんとしてないですね。(笑)
――それでも救われるんだと思うと、そこにちょっと希望があるなとも思って。
そう、それでもいいんですよね。
ちゃんとできなくてもいいんです。
――ちゃんとできなくて、落ち込んでしまいそうなときに、「ひめくり」のメッセージが「明日も頑張ろう」と思わせてくれるかもしれません。
そうだったら嬉しいですね。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。

みなみななみさんのイラスト展「耳を澄ます」が、2026年9月16日(水)~9月29日(火)、銀座・教文館3F「ギャラリーステラ」で開催されます。
会場では最新作、『ひめくり ヘブンズプランツ 耳を澄ませて』の原画が展示されるほか、これまでの著作を手に取ることもできます。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
