“教会あるある”なIT関連のお悩みを、LINEで気軽に解決/「工房ヒラム」代表・小牧由香さん(後編)

これまでに200件以上のキリスト教関連団体のホームページ制作やWeb周りのサービス全般を手がける「工房ヒラム」。教会のSNS運用やコンサルティングも担っているほか、キリスト教メディア「クリスチャンプレス」の運営も行っています。前編では代表・小牧由香さんの経歴を中心に伺いましたが、後編では、新たにはじめたサービス「教会Skets(スケッツ)」について教えていただきました。

――「教会Skets」とはどんなサービスでしょうか?

パソコンやスマホにまつわるお困りごとを、LINEで相談できるサービスです。(教会Sketsサービスはこちら)
例えば、パソコンがいきなり動かなくなるとエラーメッセージが出ますよね。エラーメッセージは英語で、しかも長文のものが多いので、何が起こったかわからずパニックになりがちですが、そのエラーメッセージを撮影してLINEで送信すると、提携するパソコン教室の専任スタッフが24時間以内に対応してくれます。
最近では、対話形式で質問に自動回答してくれる「AIチャットボット」を導入する企業が増えていますが、どうしてもやりとりにちょっとズレが生じることがありますよ。「教会Skets」のスタッフは全員研修を受けているので、わかりにくい専門用語などは使わず、ご年配の方でもわかるよう、丁寧に解決方法を伝えてくれます。
パソコンやスマホ以外にも、「プロジェクターに投影できない」、「zoomの音声のトラブル」、「礼拝のオンライン配信、うまく音が出ない」など教会におけるさまざまなITトラブルに対応しています。

――工房ヒラムはホームページ制作をはじめ、既にたくさんのサービスを展開されていますが、どうしてこのサービスを始めようと思われたのでしょう?

まず、私自身の所にこうしたお問い合わせ、助けを求める声がものすごくたくさん寄せられるんです。
それだけ、今の時代において教会はITなしでは回らなくなっているということだと思います。
礼拝で配布する週報一つをとってみても、まず原稿を打ち込むためにwordが使えないといけないだとか、イラスト素材を探してレイアウトしたり、献金で集めたお金などを表作成でデータにしたり、プリンターで印刷するためにネットワークに繋いだり――と段階的にITにまつわる知識や技術が必要になります。
また、最近では、オンラインで礼拝を配信したり、説教でプロジェクターを使ったりする教会が増えていますが、「スライドの作り方がわからない」「うまく画面が共有できない」などの相談も多いですね。

――年配の方が多い教会だと、確かにいろんな場面でちょっとしたトラブルが発生しそうですね。

そうですね。それに、身近にいる若い方に「どうしたらいいの?」と聞いても、難しいIT用語で答えられるから、余計に分からなくなってしまうんです。

――なるほど。その光景が目に浮かびます。

それで、年配者にも教えることが慣れている人、IT用語を使わずに丁寧に教えられる人がいないか……と思っていた時に、全国規模でパソコンやWebのサポート事業を展開されている企業を知り、教会に特化したITサポートのサービスをお願いしました。

――LINEで気軽に聞けるのがいいですね。

そうなんです。年配者にとってもLINEは今やライフラインの一つとなっていて、多くの人が利用しているということも決め手になりました。
比較的すぐに対応してくれるので、「明日までに週報を作らなければならないのに、エラーが出て止まってしまった。どうしよう!」というようなタイミングにも、相談しやすいと思います。

ITサポートには、困った時に実際に駆けつけてくれるサービスもありますが、費用が高い傾向があります。さらに、作業内容によっては「ここから先は別途料金が発生します」と言われてしまうことも……。そもそも、PCには教会の財務状況や、教会員の個人情報が全部入っているからと、他人に触られることに対して抵抗がある人も多いんですね。
だから、なるべく費用を抑えて、手厚いサービスを提供したいと考えたのです。
料金は年会費12,000円、月額で1,000円と設定しました。

――小牧さんのように、「PCやWebに強いから」という理由であれこれお願いされている方が、他の教会にもたくさんいるかもしれませんね。

まさにそれが私も心配していることの一つで……。
前編でも少しお話しましたが、「ホームページをリニューアルしたい」というお客様の理由が「これまで担当していた人が、教会へ来なくなってしまった」と言われることがすごく多いんです。
ホームページの中身については、またちょっと違ったサポートが必要ですが、ある程度の年齢になってから初めてITに触れた人にとって、とにかくわからない、難しいと感じている人がたくさんいます。だからちょっとしたことでも、ついついその分野に強い人、詳しい人に頼ってしまう。機材が壊れたか、大きなトラブルかと思いきや、実はコンセントが抜けていただけだった、というのも本当に良くある話です。こうしたことの積み重ねがストレスになり、教会に行くことすら嫌になってしまうというのは、本当に不幸なことです。
「教会Skets」がそうしたことを回避する一つの手助けになれば嬉しいですね。

――工房ヒラムとして、今後の展望などがあれば教えてください。

いま、AIを使って日本に存在する約8,000軒の教会の分析を行っています。

クリスチャンプレスを運営していると、検索履歴から多くの人が「聖書」や「キリスト教」に興味、疑問を抱いているということがよくわかります。ただ、検索した結果、たどり着いた情報の提供元が正しいものばかりとは限りません。
また、クリスチャンではない人のほとんどは、何か悩んだり苦しんだりした時や、色んなことがわからなくてインターネットで検索した時、その答えを教会には求めていないでしょう。でも実際は、教会が答えを持っていた、ということもあるのでは、と思うのです。
このマッチングがうまくできるように、教会側はいまどんなことが求められているのかを知っておいた方がいいと思いますし、新しい人たちに来てもらうためにはどんなことを発信すればいいかといった情報も伝えていきたいですね。

――ただ待っているだけでは人は来ない。心に訴えかけるメッセージが必要ですね。
貴重なお話をありがとうございました。

工房ヒラムのHP

KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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