自分を”慈しむ”ような気持で身に着けてほしい/アクセサリー作家・松田萌さん

自身のブランド「moe.matsuda」を展開する松田萌さん

――もの作りの仕事に携わるきっかけは何だったのでしょう?

父が陶芸家ということもあって、子どもの頃から職人の仕事に対して憧れがありました。
ただ、私自身の興味は土よりも“金属”に向いていて。
美大に進んだのですが、専攻はデザインだったので、アクセサリーは独学で作り始めました。

2022年からは東京に拠点を移し、いまはある作家さんのもとで学びながら制作活動をしています。

――お父様は、沖縄を拠点に作陶をされている松田米司さんですね。
どんな子ども時代でしたか?

子どもの頃から両親には「勉強しなさい」だとか、「きちんとした仕事に就きなさい」と言われたことはなく、私の興味の赴くまま、制限なくやりたいことを自由にやらせてもらっていました。
ちょっと変わったものを作っても笑ってくれたり、図工の時間に作った作品を気に入って飾ってくれたりもしていましたね。

父親である松田米司さんと、食卓の上で一緒に仕事をしたいとの思いから、カトラリー制作にも力を入れている

父親である松田米司さんと、食卓の上で一緒に仕事をしたいとの思いから、カトラリー制作にも力を入れている

――ご家族が全員クリスチャンだと伺ったのですが、萌さんも子どもの頃から教会に通っていたんですか?

正確に言うと、母のお腹の中にいる頃からですね(笑)。
初めの頃は両親や姉について行くという感覚だったのですが、子どもながらに心地いい空間で時間を過ごしているような感覚がありました。

通常礼拝の前に行われる、子どもたちのための礼拝も楽しかったです。
みんなで讃美歌を歌いながらダンスをしたり、ゲームをしたり、牧師さんのお話を聞いたり…。毎週楽しみだったので、学校の友達のことも「一緒に遊ぼう」という感覚でよく誘っていました。

――子どもの頃から日曜日は礼拝に参加するのが当たり前という環境の中で、改めて自分の意思で洗礼を受けるのはどんなタイミングなんでしょうか。

私が洗礼を受けたのは小学3年生の時です。もしかしたら、他のクリスチャンホームで育った子どもたちより早いかもしれませんね。

その当時の私は、学校のお友達との関係に悩んでいました。
どうすればその子とうまくやれるだろうと両親に相談する中で、私自身にも問題があることに気付いて、「神様の存在を受け入れることで、その友達ともっと仲良くなりたい」と信仰告白をしました。

――“隣人を愛する”実践しているというか…とても成熟しているように感じます。
思春期になると周りにクリスチャンの友達がいなかったり、部活などをきっかけに通わなくなるという話もよく聞きますが…。

確かに、運動系の部活に入ってから忙しくなったのですが、日曜日は礼拝の後に練習に参加したり、時間をやりくりしながら通っていました。
両親や姉、弟たちも揃って教会に行っていたのでみんなと一緒にいたいという想いや、部活が厳しかったから教会の方が良かったということもあるかもしれません。(笑)

――なるほど。(笑)きっと萌さんにとって、教会はずっと安心できる場所だったんですね。

アクセサリー作家・松田萌さん
――これは私の主観なんですが…、他の都市と比べて沖縄の方はコミュニティをとても大切にしている印象があります。
先祖崇拝など沖縄ならではの信仰が根付いている一方で、クリスチャンの方も多いですよね。だからといっていがみ合ったりもしていなくて。

そうですね。
ちょっと独特なところもありますが、沖縄の人はみんなで団結して「沖縄を盛り上げよう」という想いが強いかもしれません。

沖縄に教会やクリスチャンの方が多いのは、アメリカ統治下にあったことも関係があるとは思いますが、もともと沖縄には“チャンプルー(ごちゃ混ぜ)文化”という言葉があって、いろいろな国の文化の影響を受け、融合させながら独自の文化を形成してきた歴史があります。
昔の人たちは、当たり前のように自分たちとは違う考え方や価値観を受け入れてきたのではないでしょうか。

――今でこそよく聞く“多様性”という言葉がなかった頃から、沖縄にはお互いを受け入れ合う土壌があるんですね。
萌さんがもの作りをされる上で、沖縄で育ったことや、クリスチャンであることは影響がありますか?

東京に来てから、沖縄で暮らしていた頃は庭に生えている植物や、海に沈む夕陽など、ずっと身近にあった光景がデザインのもとになっていたことに気がつきました。こっちでは、わざわざ探しにいかなければそうした光景を見つけることができなくて…。
東京は毎日のように楽しいイベントや展示が開催されていて、もの作りをする上で制作活動がしやすい環境も整っていますが、いずれは沖縄に戻ってアトリエを構えたいという気持ちがあります。

また、本来の私は自分に自信がないのですが、ときどき勢いに任せて突き進んでしまうことがあります。東京に拠点を移したこともそうですね。
自信はないのに、なんだか大丈夫な気がするというか――たぶん、子どもの頃からずっと教会に通っているからこそ、潜在的に「自分は神様に愛されているから、大丈夫」という感覚があるのだと思います。

――人生において安心できる場所や、心の中に「大丈夫」と揺らがない柱があることはすごく大きな要素だと思います。
お仕事をする上では、どんなことを大切にしていますか?

世の中にはたくさんの形やデザインが溢れかえっていて、似ているように見えるものもたくさんあります。でも、小さな“丸”ひとつをとっても、私がデザインに取り入れるときには理由がある。それを、自分の言葉で説明できるようにしたいと思っています。

もう1つ、着けてくださる方にとっては、そのアクセサリーが自分を大切にするための“お守り”のようなアイテムになればいいなという想いを込めて制作しています。

アクセサリー作家・松田萌さんのの作品

――お気に入りのアクセサリーを身に着けると、それだけで気持ちが明るくなったり、その日1日が気分良く過ごせたり…。私も含めて、そんな経験をしている人は多いと思います。

そうですね。その気持ちがとても素敵で、大切なことだと思いますし、私のアクセサリーがそんな存在になれたら嬉しいですね。

――萌さんのアクセサリーは、使ってくださる人へのラブレターのようだなと感じました。
素敵なお話をありがとうございました!

松田萌さんのInstagram:@moe.matsuda.acce
※イベント出店情報など随時更新されています。オフィシャルショップへもこちらから

 

KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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