独学で始めた鋳造

――佐藤さんの代になって鋳造を始めたとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか。

先ほどもお話したように1977年に父が川口で創業した当時は、工芸品を製造する鋳物工場がたくさんありました。でも、時代とともに機械化が進み、どんどん減ってしまった。
そこで1993年に羽生市へ工場を移しました。
というのも、もともとは、引退を考えていた鋳物屋さんと一緒に加須で工場をやろうという話だったんです。でも、その方が「もう辞める」と決めてしまって、結局、設備や道具だけを引き継ぐことになりました。

「じゃあ、ちょっと自分たちでやってみようか」と、独学で始めたのがスタートです。
その後も廃業する鋳物屋さんから道具を譲り受けるなど、不思議なくらい必要なものが自然と集まってきました。

振り返ると、これは神様が「やりなさい」と導いてくださったのかなと思います。
父も昔から「いつか自社で、鋳造にまつわる全工程を完結させたい」と思い描いていたので、その祈りが聞かれたのかもしれません。

原型をつくる技術も、鋳物を加工して仕上げる技術も、父の代ですでにありました。足りなかったのは鋳造だけ。
その最後のピースを僕が埋めることになりました。

――こちらもなるべくしてなったという感じですね。

そう思いますね。
独学で始めたのですが、自然と身についてきた、という感覚に近いです。

旧約聖書の『出エジプト記』(31章)には、神様が職人のベツァルエルとオホリアブに知恵と技を授け、幕屋や契約の箱を造らせたという場面があります。もともと技術があったというより、「この役目を担いなさい」と与えられたことで、その働きができるようになっていく。僕は、職人の技術もそういうものなんじゃないかと思うんです。

必要とされる役割が与えられて、その中でできるようになっていく。だから僕も、鋳造に関しては神様から与えられた賜物なのかなと思っています。ある日、ぱっと道が開けて、「できるようになった」という感覚なんです。

鋳造の技術を次の世代へ

――ものづくりマイスターとしても活動されているとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

一級鋳造士の資格を取得して名刺に記載していたところ、商工会の方から「ものづくりマイスターを取得しませんか」と声をかけていただきました。
当時は制度のこともよく知らないまま取得したのですが、あとになって厚生労働省が熟練技能者を学校や企業などへ派遣し、技術指導を行うための制度だと知りました。

鋳造業界でも外国籍の職人が増え、技術指導にも携わっています。

――次の世代に技術を継承するための制度なんですね。

そうです。でも、僕は職人を育てるだけじゃなくて、子どもたちにも鋳造の面白さを伝えたいと思っているんです。
基本的に制度は若手技能者を育成するためのもので、年齢制限が設けられているのですが、「若者が対象なら、じゃあ小学生でもいいじゃないか」と思ったんです(笑)。

「ひとつぶくらふと」という鋳造体験も、その一つです。低い温度で溶ける錫を使って、安全に鋳造を体験できるようにしています。イベントでは子どもたちにも体験してもらっていて、先日も約500人が参加してくれました。

「ひとつぶくらふと」の様子

――楽しそうなイベントですね。今のような人生になることは、想像していましたか?

まったくなかったです。

もちろん、「こうなったらいいな」「ああなったらいいな」と妄想することはあります。でも、その中には神様がかなえてくださるものと、そうでないものがあるんです。

かなうものは、自分が動き出す前から神様が準備してくださっていて、一歩踏み出した瞬間に、一気に人や物事が集まってくる。いつもそんな感覚があります。

だから、まずはやってみる。そして神様に委ねる。その先に実りがあるのか、それとも聖書に出てくる「実を結ばないいちじくの木」のようになるのかは、自分では決められないと思っています。

小さなものを育て、大きな実りへ

――ということは、あまり先のことは考えていないのでしょうか。

あまり考えないですね。計画すればするほど、うまくいかないことが多いんです。

「こうしたほうがいい」と一生懸命準備したことほど、無駄にったりする。だからまずはやってみて、その先は神様に委ねています。

僕の父はね、「ダボハゼ」というあだ名で呼ばれていたんです。どんな仕事でも“丸飲み”してしまうからです。
周囲からは「何でも拾ってしまう」と嫌われることもありましたが、お客様にとっては、なんでも引き受けてくれる父は、救いの存在だったでしょう。

僕もその考え方を大切にしています。ただ、父と少し違うのは、一緒に仕事をしてくれる人たちにも幸せになってほしいということです。

難しい仕事を受けたら、自分たちだけで抱え込むのではなく、工程を細かく分けて、それぞれが取り組みやすい形で協力会社へお願いするようにしています。そうすることで、多くの方に支えていただけるようになりました。

そうした知恵も、ものづくりの賜物も、神様が与えてくださったものばかりだと感じています。

――日頃、大切にしている聖書の言葉はありますか。

やはり「からし種」のたとえですね(マタイ13章31~32節、ルカ13章18~19節)。

何かを始めるときも、「からし種一粒から始める」ということを大切にしています。小さなものがやがて大きな実りになる――その教えは、仕事にも通じると思うんです。

ビジネスも最初から大きく始めるのではなく、小さく始めて育てていく。そして育ったものを大切にしていく。それが、僕なりのクリスチャンとしての仕事のあり方です。

それと同じように、どんな仕事も「小さいから」と侮らないようにしています。自分自身も低いところに身を置いて、相手がどんな立場であっても、なるべく対等な関係で協力し合えることを大切にしています。

「ひとつぶくらふと」で制作できる作品の一例

小さなきっかけでも、それがやがて大きく育っていく。それこそがイエス様の奇跡であり、神の国なんじゃないかと思っています。
この工場も、そんな場所であってほしいですね。

――もしこれからも、「これまでに取り組んだことがない」ものでも、神様が示してくださったと感じたら挑戦されますか。

もちろんやります。

――素敵なお話をありがとうございました。

工房一粒のHP https://koboichiryu.com/

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KASAI MINORI

KASAI MINORI

主にカレーを食べています。

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